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国土強靱化は将来への必要な投資【9月25日(金)】

台風25号による大きな被害をはじめ、近年の豪雨や台風、地震による被害を見ると、日本の国土強靱化のあり方を改めて考える必要があると思います。


国土交通省も台風25号について、道路規制などを含む被害状況を継続して公表しています。


ただし、「数十年にわたって国が何もしてこなかった」とまで言うのは正確ではありません。


河川改修、堤防、砂防施設、道路・橋梁の耐震化などへの投資は続けられてきましたし、近年は国土強靱化政策も本格化しています。


政府は2026~2030年度の5年間について、おおむね20兆円強を事業規模の目途とする「第1次国土強靱化実施中期計画」を進めています。


それでも、これまでの投資が十分だったのかという検証は必要でしょう。


高度経済成長期に整備された道路、橋、トンネル、上下水道などは一斉に老朽化しています。


その一方で、集中豪雨など自然災害のリスクは変化しており、従来の防災水準だけでは対応が難しい場所もあります。


政府自身も、流域治水、道路施設の老朽化対策、上下水道の更新、橋梁の耐震化、無電柱化などを重点課題として挙げています。

 

特に重要なのは、「災害が起きてから復旧する」という発想から、「被害が起きる前に投資して被害を小さくする」という発想への転換だと考えます。


大規模災害が発生すれば、住宅やインフラの復旧費だけでなく、工場の操業停止、物流網の寸断、観光客の減少など、経済全体に巨額の損失が生じます。


事前の防災投資には、その損失を抑える意味があります。


国土強靱化は単なる公共事業ではなく、人命と財産を守り、日本経済の基盤を維持するための長期投資と位置付けるべきでしょう。


今回の台風被害も踏まえ、過去の投資不足の有無を冷静に検証すると同時に、老朽インフラの更新や治水、防災DXなどを財政事情だけで先送りせず、計画的かつ継続的に進めることが重要だと思います。

高齢者の「住まい」問題【9月24日(木)】

65歳以上の人口が過去最高となる中、年齢を理由に「家を借りられない」という高齢者が増えています。


「高齢だから」という理由で賃貸住宅を借りにくくなる問題は、今後さらに重要になると思われます。


総務省によると、2026年の65歳以上人口は3,624万人、総人口に占める割合は29.6%と過去最高です。


もはや高齢者の住宅問題は、一部の人だけの問題ではありません。


ただ、大家側の事情も無視できません。


高齢の単身者については、孤独死、家賃滞納、認知機能が低下した場合の対応、死亡後に残された家財の処分などへの不安があります。


国土交通省も、こうした問題が大家の「拒否感」の背景にあると認識しています。


したがって、単純に「高齢者を断る大家が悪い」と考えるだけでは解決は難しいでしょう。


重要なのは、高齢者を受け入れることで生じるリスクを、大家だけに負わせない仕組みをつくることです。


2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法では、安否確認や見守り、福祉サービスへの橋渡しを行う「居住サポート住宅」が創設され、家賃債務保証や死亡後の残置物処理についても制度が整備されています。


方向性としては妥当だと思います。


さらに考えるべきなのは、「元気なうちに住み替える」という選択肢です。


70代、80代になってから住居を探すと選択肢が狭くなるのであれば、60代から将来を見据えて、高齢になっても住み続けられる住宅へ移ることが容易な社会にする必要があります。


保証人がいなくても契約できる仕組みや、見守りサービス、終身建物賃貸借などをもっと一般化することも有効でしょう。


日本には賃貸用の空き家が約443万戸ある一方、高齢者には「借りられる家がない」というミスマッチがあります。 


高齢化がさらに進む日本では、年齢だけで住まいの選択肢が狭まらない社会をつくることは、福祉政策であると同時に住宅政策そのものだと思います。


大家の不安を制度で軽減しながら、高齢者が安心して住み替えられる市場をつくることが、現実的な解決策ではないでしょうか。

日米独でみる家計金融資産【9月18日(金)】

日銀が発表した2026年4~6月期の資金循環統計によると、6月末の日本の家計金融資産は前年同期比11.0%増の2,519兆円となりました。


日本の人口を約1億2,300万人とすると、単純計算で1人当たり約2,050万円になります。


経済規模と比較しても、家計金融資産は名目GDPの3~4倍程度に相当し、日本の家計が非常に大きな金融資産を蓄積していることが分かります。


一方、米国の家計・非営利団体が保有する金融資産は2026年6月末で約153.5兆ドルです。


人口約3億4,300万人で割ると1人当たり約44.8万ドルとなり、1ドル=150円で換算すれば約6,700万円と、日本の3倍強に達します。


米国の特徴は株式や投資信託などの市場性資産の割合が高いことです。


このため株価上昇局面では資産価値が大きく膨らみやすく、今回も株高が家計資産増加の大きな要因となっています。


ドイツは比較可能な最新値である2026年3月末の家計金融資産が約9.49兆ユーロです。


人口約8,350万人で計算すると1人当たり約11.4万ユーロで、1ユーロ=175円なら約2,000万円となり、日本に近い水準です。


特に注目されるのは資産構成の違いです。


日本では2,519兆円のうち現金・預金が1,132兆円と約45%を占めます。


これに対して米国は株式などへの投資比率が高く、株価上昇の恩恵を家計が受けやすい構造です。


日本もNISAの拡充などを背景に「貯蓄から投資へ」の流れが進んでいます。


巨額の現預金の一部が今後、株式や投資信託などへ継続的に移れば、家計の資産形成だけでなく、日本の資本市場を支える長期的な資金源になる可能性があります。

日本経済新聞・広告料金を過大請求【9月17日(木)】

日本経済新聞社は、9月15日、日経新聞朝刊に折り込んで配布する広告冊子「THE NIKKEI MAGAZINE」の広告主2社に対して発行部数を実際より多く提示し、広告料金を過大請求していたと発表しました。


報道によれば、対象は2022~2026年に発行された「THE NIKKEI MAGAZINE」の計29冊で、実際より1万5,000~25万部多い部数を広告主に提示し、約4年間の累計では過大提示が約250万部に達したとされています。


また、古い部数や誤った数字を示したほか、広告主が指定した地域以外に配布したケースもあったとされています。


特に問題なのは、発行部数が広告料金を決める重要な基礎データだという点です。


広告主は「何部配布され、どの地域の読者に届くのか」を前提として広告費を支払います。


その数字が意図的に実態と異なっていたのであれば、広告商品の根幹となる取引条件そのものが損なわれたことになります。


しかも、広告主2社からそれぞれ数千万円を上回る料金を受け取っていたとされており、金額的にも軽視できません。


さらに、日本経済新聞は企業の不正やガバナンス、情報開示のあり方を日常的に報道するメディアです。


それだけに、自社の広告事業で正確性や透明性を欠く事態が起きたことは、一般企業以上に重く受け止められるでしょう。


一方で、日経新聞社が問題を公表し、外部弁護士に調査を委任して、原因や動機だけでなく「組織的関与の有無」まで調べるとしている点は重要です。


今後の最大の焦点は、なぜ約4年間、29冊にわたって問題が続いたのかです。


担当者個人の不正だったのか、営業目標や社内管理体制に構造的な問題があったのか、上司や管理部門が数字をチェックできなかった理由は何かを明らかにする必要があります。


また、同社は別刷り広告サービスについても他に問題がなかったか確認するとしています。


新聞社にとって最も重要な資産の一つは「情報の正確性に対する信頼」です。


今回の問題では、過大請求分の返還だけで終わらせるのではなく、第三者による検証、責任の明確化、発行・配布部数を営業部門だけで変更できない仕組みなど、具体的な再発防止策を公表することが、信頼回復には不可欠だと思います。

京都大学・知財活用で躍進【9月16日(水)】

国内の大学における特許などの知的財産収入で、京都大学がトップクラスに位置しています。


このことは日本の大学が「研究する場」から「研究成果を社会に還元する場」へ変化していることを象徴する動きだと思います。


京都大学は医学・生命科学、医薬品、化学・材料など幅広い分野で世界的な研究成果を生み出しており、iPS細胞関連技術はその代表例です。


こうした研究成果を論文発表だけで終わらせず、特許として権利化し、企業へのライセンス供与や共同研究、大学発ベンチャーの設立などにつなげていることが、知的財産収入の拡大につながっています。


特に注目したいのは、特許収入が単なる大学の「副収入」ではないという点です。


企業が大学の技術を利用して新薬や新素材、新しい製品・サービスを開発すれば、大学の基礎研究が実際の産業や社会課題の解決につながります。


大学側も得られた収入を新たな研究や人材育成に振り向けることで、「研究→特許→事業化→収入→次の研究」という好循環を生み出すことができます。


また、京都大学は大学発ベンチャーの創出でも国内有数の存在です。


研究者自身が起業したり、外部企業と連携して技術を事業化したりする仕組みが整ってきたことも、知財活用を支える大きな要因でしょう。


日本は優れた基礎研究を持ちながら、その成果を事業化して収益につなげる力が欧米に比べて弱いと指摘されてきました。


その意味で京都大学の取り組みは重要です。


今後、東京大学や大阪大学、東北大学をはじめ全国の大学でも知財戦略がさらに強化されれば、大学が新しい産業を生み出す重要な拠点になる可能性があります。


大学の評価についても、論文数や研究実績だけでなく、「研究成果をどれだけ社会実装につなげたか」という視点が、これまで以上に重要になっていくと考えます。

「100歳10万人時代」が問いかけるもの【9月15日(火)】

全国の100歳以上の高齢者が初めて10万人を超えました。


日本の長寿社会が新たな段階に入ったことを象徴する出来事だと思います。


厚生労働省によると、2026年9月1日時点で100歳以上は10万7,677人となり、前年から7,914人増加しました。


1971年以降56年連続で過去最多を更新し、2012年に5万人を超えてからわずか14年で約2倍になっています。


また、女性が全体の87.6%を占めています。


まず、これほど多くの人が100歳まで生きられるようになったこと自体は、医療技術の進歩や公衆衛生、栄養状態、生活環境などが長期的に改善してきた成果として喜ばしいことです。


1963年には100歳以上は全国でわずか153人でした。


かつては極めて珍しかった「100歳」が、現実的な人生の一つの姿になりつつあります。


一方で、重要なのは「何歳まで生きるか」から「何歳まで元気に、自分らしく暮らせるか」へ社会の目標を変えることだと思います。


100歳以上が増えるほど、医療・介護費の増加、介護人材の不足、認知症対策、独居高齢者の見守り、年金や社会保障制度の持続性といった問題も大きくなります。


単純に平均寿命を延ばすだけではなく、健康寿命を延ばし、できるだけ長く自立した生活を送れる環境づくりが欠かせません。


さらに、高齢者を一律に「支えられる側」と考える発想も見直す必要があります。


元気な高齢者が仕事や地域活動、子育て支援、ボランティアなどで経験を生かせる社会になれば、長寿は社会保障上の負担というだけではなく、大きな社会資源にもなります。


厚労省も老人週間の目標として、高齢者の社会参加などを掲げています。


人生100年時代はもはや単なるキャッチフレーズではなくなってきました。


100歳以上10万人突破を祝うと同時に、長生きすることそのものが幸せなのではなく、長生きして良かったと思える社会をどうつくるか。


今回の数字は、日本にその課題を改めて突き付けているのだと思います。

金融所得課税が30%へ増税?【9月14日(月)】

近年、株式などの譲渡益や配当金にかかる「金融所得課税」の税率見直しを巡り、活発な議論が続いています。


2014年以降、復興特別所得税を含めて20.315%の税率が適用されてきましたが、これを30%程度へ引き上げるべきだという提案が浮上しています。


この議論の背景にある主な要因が、いわゆる「1億円の壁」と呼ばれる税制上の課題です。


現行制度では給与所得などに累進課税が適用される一方、金融所得は一律約20%の分離課税となっています。


その結果、所得が1億円を超える富裕層ほど所得全体に対する実効税率が低下し、不公平感を生んでいるとの指摘がなされてきました。


この是正に向けた具体的な取り組みとして、2025年からは「ミニマムタックス(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化)」が導入されています。


年間所得が一定水準を超える超富裕層に対し、実効税率が最低ラインを下回らないよう追加課税を行う仕組みです。


一方で、対象が一部の超富裕層に限られることから、金融所得課税そのものの本則税率を30%へ引き上げるべきだという意見も根強く存在します。


各政党間でも、格差是正や財源確保を重視して課税強化を支持する立場と、市場への影響や投資意欲の減退を懸念して反対する立場で主張が分かれています。


仮に今後増税が実施された場合、富裕層や投資家の間では不動産投資へのシフトや法人の活用、NISA等の非課税制度の満額利用といった対策がより重視されるでしょう。


では、金融所得課税が30%へ引き上げられる可能性は実際にあるのでしょうか。


現時点において、金融所得課税が一律30%へ引き上げられると正式決定された事実はありません。


政府や国会、有識者の間でも議論が続いていますが、一律増税は投資の縮小や経済の活力低下を招く懸念があり、慎重な見方が多いのが実情です。


しかし、今後の財源確保という観点を考慮すると、将来的に税率が引き上げられる可能性は十分に想定されます。

金融所得課税の見直しは単なる税制の変更にとどまらず、市場の活性化と公平な分配のバランスをどう取るかという国家的な選択を象徴しています。


今後の与野党における議論のゆくえや税制改正の動向について、引き続き注視していく必要があると言えるでしょう。